久々更新。『蒼の乱』を観てきたよ。

すっかり春になりまして、えぇ、更新をサボタージュしておりましたTARです。ポタージュを飲んでおりましたTARです。「イイ加減、更新せんといかんなぁ。どげんかせんといかんなぁ」とは思っていたんですけど、いかんせん、ヤル気が別の方向にいっておりまして、えぇ、禁煙しとります。消費税8%に伴い、禁煙しとります。意外にスムーズに禁煙突入で、自分でもビックリ。あぁ、そんなに吸いたくならねぇなぁって。


てな具合で、先週、劇団☆新感線の『蒼の乱』を観てきたよ。初めて行ったけど、シアターオーブってすげぇのな。渋谷駅の真ん前、ヒカリエの中にあんだけど、超広い!吹き抜けとか、空間の使い方が贅沢。「気持ちのイイ吹き抜けですねぇ」って『渡辺篤史の建もの探訪』か!ってぐらい空間が贅沢に使われてて、ちょっぴり目眩がするわ。なんてウソを交えつつ、相変わらずの特殊能力で獲得した2列目で観劇。近過ぎて逆に観づらい。客席の間を花道のように役者が登場してくる場面とか、全然気が付かない。もし気が付いたとしても、ワザワザ後を振り返らないと観えない。あと、確実に舞台上の役者からも見える位置に座ってるから、全然違うトコロを観てたりすると「あ!コイツ、別のトコ観てやがるな」って分かっちゃいそうで怖い。さらに、舞台上の役者の生声とスピーカーからの音響とが微妙にズレるからナニ言ってるかが聞きづらい。みんなで歌う歌なんて特にヒドい。とは言え、主役が喋っている時に、舞台の端で脇役がマイクが拾わないぐらいの声でボソボソッと喋ってる声が聞こえるのは前列に座ってる観客の特権。


ストーリーとしては、平安時代中期の承平天慶の乱がモチーフ。関東地方では平将門、瀬戸内海では藤原純友が同時期に起こした朝廷への謀反。将門を演じるのは松山ケンイチ、そしてその妻蒼真を演じるのが天海祐希。天海さんの舞台復帰第1作目。さらに、東北地方の流浪の民蝦夷”の王として平幹二郎、その家来として早乙女太一、朝廷の役人として梶原善。あとはいつもの劇団員の方々。新感線の看板であるF先輩コト古田新太が居ないの本公演としては、そこそこ豪華のキャスト。


松ケン(≠サンバ)は、さすがに大河ドラマや大コケした映画『カムイ伝』でガッツリと鍛えられたからか殺陣は上手い。ただ、役者として面白かったかって訊かれたら「う〜ん・・・」ってカンジ。松ケンって元々が青森出身で、自分で田舎っぺキャラを全面に出してるから、将門という純朴で一途、単純で不器用な田舎の若武者を演じても全然意外性がないのよ。あと、映画中心の映像仕事ばかりやってきたからか、舞台の上で”普通の演技”が既に不自然。さりげなく歩くとか、「はい。ココで4歩歩きます」的な動きになるし、ナニかを力説する時に手を動かすのも、妙にぎこちない。これから舞台を踏んでいけば、元々が演技派なんだからスグに上手くなると思うんだけどね。今後に期待ってトコでしょうかね。


今回で新感線の舞台が3回目の早乙女太一も、相変わらず謎の剣士の役。まぁ、今回は多少はキャラが明るくなったけど、過去2回とテイストは同じ。殺陣のキレはバツグンだし、キレ長の目が持つ妖しい雰囲気が独特の彼ですが、アクションが多い新感線の舞台との相性は良いんだけど、「毎回同じような役=他に引出がない」ってコトなんだろうね。逆に言えば、他にそういうキャラの俳優さんが居ないってコトなのかも。ちなみに、今回は実弟早乙女友貴も敵役として出演していて、二人の殺陣のシーンがあるんですが、これがまぁ、高速過ぎてビビるわ。回り舞台で足元が不安定なトコで跳んで斬って。チビッコの頃からカラダに叩き込まれたワザってすげぇなって思った。多分、弟も今後の新感線の公演の常連になると思うわ。


んで、天海さん。新感線初の女性座長。まぁ、キレイですわ。腕とか首とか細ぉ〜いのに病的な細さじゃないの。スラリと伸びた健康的な細さなの。で、立ってるだけで絵になるし、照明とは別に後光が差してるようなオーラ。それが動くと、しなやかで優雅。花びらが舞い落ちるよう。歌も上手いし、踊りも上手いし。さすが宝塚史上最速でトップに登りつめただけあって、存在感がハンパじゃない。昨年の舞台降板以来、舞台復帰第一弾とはとても思えないぐらい堂々としてる。ただ、宝塚でアクションをするコトも無かっただろうから、2幕で剣を持つシーンになると、ちょっとお粗末。やっぱり天海さんには、自らが剣を持つんじゃなくて、部下をアゴで使うような姉御肌のキャラクターを演じ続けて欲しいわ。


と、これだけ豪華なキャストが集まったってのに、全体的な正直な感想としては「物足りない」ってトコロ。何故ならば、ストーリー(=脚本)がイマイチなのよ。冒頭、平安貴族の酒席の余興として殺されそうになっている蒼真(天海さん)を将門(松ケン)がたまたま助けるんだけど、なんだか分からない間に、その二人が恋に落ちてて、いつの間にか結婚するとか言ってるんだもん。お互いの心情の揺らぎみたいなモノが全く表現されてないから、感情移入もできないし、全然ストーリーについていけない。で、将門の故郷である坂東(=関東)に戻ってくるんだけど、争いを好まないハズの蒼真が、夫である将門のために剣を取るってのも唐突。今までの中島かずきの戯曲では、後半になると裏切りに次ぐ裏切りで敵味方が二転三転するのは当たり前なんだけど、今回は主人公がブレブレになって、どんどん面白くない方に面白くない方に展開。途中「バッカバカしい」って呆れちゃったもん。まぁ最終的にはちゃんと収まるトコロに収まって、大団円を迎えるんだけど、諸手を挙げて「面白かったぁ!」とはならなかったねぇ。最後の最後、天海さんのラストシーンで救われたカンジ。


次に新感線を観るのは、日本を代表する叩き上げの2つの劇団『新感線』と『大人計画』の奇跡のコラボ『ラストフラワーズ』になるのかな。松尾さんが戯曲を書くらしいから、ど〜なるコトやら。