反骨精神だけは無くしたくないなぁ

昨日の記事、なんだかヤケに熱い文章になりましたが、なんでだろう?って思ったら、コレが原因だ。


オレが長年ず〜っと追いかけてる『奈良美智』という現代芸術家がいるのね。
吉本ばななの単行本の表紙の絵を手掛けていたりするんで、名前は知らなくても、彼の絵を見たコトがあるという人は多いと思う。
この人が国内で個展を開くと聞けば、行ける場所であれば是が非でも行きたいと思ってる。
過去には3回、彼の故郷である青森県弘前市で開かれた個展にも行ってるし、昨年の7月も横浜美術館で個展を開くというから、大阪からわざわざ参戦した経緯もある。
基本的には絵が主体の作家だけど、粘土による作品もあるし、2次元・3次元にこだわらない自由な作風が身上。
他のアーティストとコラボしてインスタレーション的な観せ方をする作品・個展もあって、観に行く度に、毎回毎回、新鮮な驚きと刺激を受けて帰ってくる。すげぇ大好きな作家。


確かに、その作品の見た目に魅力があるってのは大前提なんだけど、その作品が具現化する作家の『思想』みたいなモノに共感するコトの方が多いかも。
女子受けしそうなカワイイ作風なのに、作品の根底に流れているテーマは結構シビア。
勝手な想像でしかないんだけど、彼の創作意欲って、理不尽なコトへの『怒り』だったり、社会への『苛立ち』みたいなモノで、それがある種の毒としてカラダに蓄積されていき、限界に来た時に作品として発露されるんだと思う。
その結果が、またまた絵であったり立体だったりってコトなんじゃないかな。イイ意味で反骨精神、パンクスピリッツに溢れた人。
穏やかな風貌と優しい目の奥にある熱い思いが反映された作品群が、どうにもオレのハートをガッチリと掴んで離さない。


NARA LIFE / ナラ・ライフ 奈良美智の日々

NARA LIFE / ナラ・ライフ 奈良美智の日々

最近、その人が過去に色んなトコロに寄稿したエッセイを一冊にまとめた本を、ちびちびと大事に読んでいる。
その中で、長年胸につかえていた「わだかまり」みたいなモノがスーッと腹の底に落ちた文章があった。
引用すると色々と問題があるので、その主旨だけをオレなりにスポイル。


・世の中が便利になると「想像力」や「創造力」がダメになるコトを恐れなければならない。
・競争原理が働くのは消費社会の原則ではあるが、価格と引き換えに大事なモノを失ったコトは明白。
・高くて買えないモノへの憧れを持ち続け、その価値を自分の中で形成するコトで得た価値観を大事にする。
・「安い」というコトだけを消費者にアピールするような商法には乗らない。
・「安いから」や「便利だから」に飲まれてしまうとナニかを失う。そこから戻れる力が必要。


結局、今の日本経済の停滞って、ドコに端を発しているかと言えば、バブル前ぐらいに大規模流通と大規模資本が各地の小さな商店街を駆逐したトコロからだと思う。
小さな町の小さな商店街で、日々の生活用品だけを購入してコトが足りてた時代の方が幸せだったんじゃないの?
多少不便でも、多少価格は高くても、あの頃の方が精神的にも豊かだったように思う。あの頃に帰れるかどうかはまた別問題だけど。
奈良美智は、海外でも活躍する日本を代表するアーティストだからこそ、今の日本を俯瞰で見れているんじゃないかな。
特に、気質が似ていると言われるドイツでの生活も長いからこそ、ドイツと比較するコトで今の日本の問題点が浮き彫りになり、憂慮しているトコロがあるのでは?
オレが常々思っていたモヤモヤを、これだけズバッと的を得た文章にしてもらって、久しぶりに溜飲が下がった。


このエッセイと一緒に、彼が撮りためていた写真集も眺めていると、上手く生きるコトよりも、自分らしく生きるコトの方が断然カッコイイように思えて仕方ない。まぁ、結局は『長いものには巻かれながら』になっちゃうんだけどね。