柿食う客『失禁リア王』観劇
すっかり空気が秋っぽくなってきて、夜中、寝てる時、寒いんだか暑いんだか分からなくなって目が覚めるＴＡＲです。お陰で、布団をかぶってフローリングで寝るという愚挙に出てしまい、なんだか朝から調子悪いわぁ。バッドスパイラルに陥りそう。
昨日は、うちの大番頭Ｓのイチオシ劇団『柿食う客』の舞台を観に、後輩Ｙと共に３人で吉祥寺まで遠征。『柿食う客』は、若手演出家の中屋敷法仁率いる、今勢いのある劇団。噂はかねがね聞いておりましたが機会に恵まれず、今回が初参戦。中屋敷法仁と言えば、”渋谷の主”として君臨した野田秀樹が池袋にホームを移し、渋谷・下北沢辺りの勢力分布図が大きく変わってきている今、次世代の担う若手演出家として注目されている人物。これから売れてくるだろうから、この機会に観るコトができてラッキー！
タイトルは『女体シェイクスピア004 失禁リア王』と、ぱっと見は扇情的で淫靡な雰囲気。それを期待してなかったと言えばウソになる。自分、男ですから。
で、この”女体シェイクスピア”シリーズは『悩殺ハムレット』『絶頂マクベス』『発情ジュリアス・シーザー』と続いている人気の演目で、今回が４作目。女性オンリーのキャストでシェイクスピアの抒情的な戯曲を演じ抜くというモノで、期待してたようなエロ路線は全くナシ！
女優のみでシェイクスピアを演じるというこの企画、奇をてらったモノのように思えるけど、考えてみれば宝塚と同じじゃん！言わば”王道”なんじゃん！って。
まぁ、シェイクスピアの頃は、逆に舞台に上がれるのは男優のみで、若い女性の役も男性が演じていましたが。詳しくは映画『恋に落ちたシェイクスピア』でも観ればイイじゃん。←余談。
オレは宝塚を観たコトがないので、心のドコかで”女性が男性を演じるコト”に違和感があるんじゃないかと思ってたけど、いやいやいや、杞憂でした。さすがにオープニングで付けヒゲの女優を観た瞬間は「あぁ、やっぱりな・・・」と思ったけど、そんなのスグにどっか行った。多少、線は細いけど、キチンとリア王やグロスター伯に見える。それが逆に軽やかで、観ていて飽きない。やはり女優だけしか舞台に立ってないってのは華やかでイイね。
しかし、なんと言っても、中屋敷のスタイリッシュな演出と舞台装置がバツグンに素晴らしい。
シェイクスピアの”四大悲劇”の一つ『リア王』を、歌あり、ダンスあり、笑いありのミュージカル仕立てにしており、通常ならば上演時間が３時間を超える戯曲を、スピーディな展開で１時間半にまとめ上げた中屋敷の剛腕に脱帽。ただでさえ複雑な人間関係と、愛憎渦巻く登場人物の心情の変化をキチンと表現しないと、観客が感情移入出来ずに置いていかれ、ストーリーの表面をなぞるだけの戯曲になりそうなモンだけど、それを歌によって上手くダイジェスト化してるトコロが秀逸。
しかも、シェイクスピアの戯曲ではお馴染みの”道化師”役の女優さんの歌がめちゃくちゃ上手い。しかもセクシーダイナバイトボディ！ミュージカルなんで、劇中音楽って非常に重要な要素なんだけど、この道化師の歌が素晴らしく、シリアスな場面ではシリアスに、コミカルな場面ではコミカルに、上手く緩急がついて、キチンとストーリーテラーの役割を果たしてる。こういうニクい演出が上手いなぁ、中屋敷。
凹凸のある円形状のコンパクトな舞台に、現代的な衣装を身にまとった見目麗しい女優陣が次々に現れ、歌い、叫び、そして消えていく様は、まさに圧巻。セクシーかつ上品で、エネルギッシュなんだけど暑苦しくない。ダイナミックなのにコンパクト、という二律背反を成立させているのは、テンポ良く進む戯曲と、シンプルな舞台装置、そして女優オンリーというスマートさなんだと思う。これは他の劇団にはない特徴じゃないかな。
おっちゃんら３人は２列目ド真ん中で観てたんだけど、キレイな女優さんが目の前で次々と歌い踊るから、もぉキョロキョロし過ぎで困っちゃう。クライマックスには全キャストが舞台最前まで出てきて横一列に並び、一斉にモデルさながらのキメポーズ！セクシーな役はよりセクシーに、カッコイイ役はよりカッコ良く。こういう”見得”があると観客としてはテンションがガッと上がる。なるほど。観てるコッチが『失禁』しそうになるわ。
ちなみに、オレはリア王の３人の娘のうち、次女リーガン役をやった女優さんがお気に入り。ちょっと背は小さいけど、鼻筋が通った顔がドストライク！
なんとなく「キレイな女優がいっぱい出る芝居」って薄っぺらいカンジで書いちゃったけど、この舞台、オレの演劇ランキングでも結構な上位に食い込みました。
吉祥寺に向かう道すがら、大番頭Ｓが「女優だけなのにちゃんとエンターテインメントとして成立してて、路線としては劇団☆新感線に近いかな」って言ってたのも納得。
『柿食う客』は、今後も要チェックな劇団ですぜ。機会があれば是非、劇場に足を運んでいただき、自分の目でご確認ください。
もし何なら、本日（9/12）の公演がUstreamで配信されますので、興味がある方は是非ご覧ください。
